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2019年8月5日、LINEノベルよりLINE文庫・LINE文庫エッジの2レーベルが創刊します!そこで、書籍を刊行されるLINEノベルオリジナル作家のみなさんへ特別にインタビュー企画を実施。今回はライトノベルレーベル"LINE文庫エッジ"から8月に刊行される『デュアル・クリード』を執筆された津田彷徨さんへお話を伺いました。


傾向を見極めて読者の心を掴む!津田さん流作品の書き方とは?

——津田さんが作品を書き始めたきっかけを教えてください。

私の場合は、小説を初めて書いたのが29歳のときです。私は本業が医者で、夜間に救急をやることがあるのですが、全く救急車が来ず何もすることがない時間などがありまして、その隙間時間になにかしたいなと思って書き始めた形です。

——隙間時間を使うのがきっかけだったのですね。最初はウェブで書き始めたのでしょうか?

最初『小説家になろう』という投稿サイトで書き始めました。

元々は救急の合間に同サイトの作品を読んでいたんです。その上で、私は分析や解析が好きなので『小説家になろう』の当時のランキングや上位に来ている作品について、次第にあらすじなどの流行を分析するようになっていました。

具体的にはあらすじを単語ごとに分解し、そこから今流行りのキーワードを抽出して、そのキーワードからどれくらいのポイントが期待できるかを予測し、今はどういう流れが来ているのかを読み解きます。


当時の『小説家になろう』では、戦記ジャンルは常時人気というわけではなかったのですが、2013年の初頭に戦記系の要素が詰まった作品が急激にポイントを取りやすいタイミングが来ました。

——それは何か限定された時期だったんですか。

はい、特定の時期です。『小説家になろう』の流行は、ずっと細かく切り替わっています。おそらく『LINEノベル』もそうなるのではないかと考えています。

——戦記関連の流れが来ていたタイミングで、「今なら戦記はいけるな!」という感じだったのでしょうか。

はい。そのタイミングで「今なら書けるし、ランキングに入るかもしれない。この救急の隙間時間を使って書いてみようか。」と思い、書かせていただきました。

——元々、分析などが得意だったのですか?

得意と言えるかは自信がありませんが、でも分析するのはある種の趣味で、あのときはその対象がWEB小説でした。実際その背後に、この流れは文化的にどういう意味があるかというようなことを自分なりに考察しながら、楽しんで分析していたように思います。

——面白いですね。そうやって期間ごとに比較していくと、流行などが見えてきますか?

見えてきます。やはり流行というか潮流ははっきりあると思います。

ただ、今回の『LINEノベル』については立ち上げなので予想がつかないです。


投稿サイトの文化は作者と読者が創っていく

——二足のわらじ的なところでつらかったり、大変だったりはありますか。

時間的な問題がありますね。基本的に深夜0時まで医師としての時間と考えていまして、そこからを作家としての時間として考えています。ですので、小説を書いているのは普段はだいたい0時から3時ぐらいまででしょうか。

——夜中の3時ですか?すごくお忙しいですね。翌日は何時頃に起きますか。

翌日は朝の8時ぐらいに起きます。ただ医師としては、現在の生活をあまり他人に推奨できない部分もあるので、もし兼業や趣味でやる人は体調を崩さないように時間と健康管理に気をつけていただければと思っています。

——書くのに心が折れそうになることはないですか。

あまりないです。小説を書いているときは非常に楽しいですね。

特に現場の医師としての仕事は目の前の方を治療するという、ある意味において閉じた部分のあるものですが、小説はたくさんの方や思ってもいなかった方に届くことがあり、その広がりはすごく楽しく感じます。

中でもネット小説は、本当に思いもかけぬところまで届くことがあり、そのあたりも非常に面白いですね。

——届いたあとの読者の方の反応はチェックされてますか?

はい、いただいたご感想等はすべてチェックしていますし、保存できるものは保存させていただいております。これは僕の宝物ですね。たまに疲れた時に見返したりして、改めて頑張ろうと励みになっています。

——反応を大事にされてるんですね。

そうですね。いただいた反応がいつもモチベーションになっています。

その意味においても、やはり小説投稿サイトはコミュニティであり、読者さんと共同で作り上げていく文化で、作家側と読者側とで醸成されていくものだと思います。


時間を短縮!津田さんが語る執筆の秘訣とは?

——ちなみに、1冊当たりどのぐらいで作品を書かれますか。

医師業が落ち着いていて他の文筆系のお仕事が入っていなかったら、大体、1カ月半ぐらいで1冊分ぐらいでしょうか。

私は音声入力で作品を書いているんです。まず、音声入力で台詞を一通り入れて、台詞を入力し終わったら、今度は区切りを考えながら情景描写を音声で入力していきます。それを後で、手で直すという形です。多分早い方なのではと思っています。

——台詞と情景描写は別々に入れていくのですね。

そうです。ウェブ系の読者さんの場合、地の文よりも会話文中心で構成した方がリズムよく読めると感じる方がいらっしゃるようなので、ウェブで掲載する作品はまず会話文の構成をして会話文だけでも話が分かるつくりにしています。

その意味では、僕の作品は明らかに会話文での説明が多いと思います。

——確かに会話文だけ読んでも理解できるような気がします。

そうですね。逆に本にする際は、会話文の説明を削って地の文を足しています。結果として、会話文における情報量は減らしています。なので、初稿の段階では会話文が多くて、それを削って地の文に移し替えていくという作業を書籍化の際は行っています。

音声入力であったり、このような小説作成方法は作業時間をどれだけ圧縮できるかという試みの中で構築してきたものです。やはりそこが僕の中の課題で、基本的に一日が24時間である以上、どうにも時間が足りませんので……。

——お忙しいですもんね。口頭で会話文を作るとのことですが、流れは事前に考えますか?

演劇のイメージといいますか、プロットに毛が生えたような1シーンごとの簡単な要約のメモを作っておきます。

誰と誰がここのシーンに出てきてこのシーンでこんな出来事が起こるというメモです。

そのメモに沿って、このキャラクターがいたらこういう会話をして、こういう展開になるというのを音声で吹き込みます。

それだけでは足りない情景描写は、後で足すというのが僕の作品作りの順番となっています。

——臨場感がある物語になってくるかもしれないですね。原稿用紙やワープロを使うイメージがあるので、意外な作り方でした。

ひととおり音声入力で作り終わったら、今度はiPadにPDFで出力して赤線で直していきます。それを第2稿にさせていただいてます。ここは要らない、ここはカットと作業していく感じです。


掲載場所によって最適な見せ方を意識している

——今回の作品の着想はどこからきましたか?

私は元々、デビューの時に戦記もののファンタジーを書いていまして、やはりファンタジー戦記が好きなんですね。

その上で、これまで異世界転生や転移に取り組んだことがなかったこともあり、今回は異世界転移ものの戦記をやりたいと思い作品を組ませて頂きました。

——作品を書くときは、どのような順序で作っていきますか?まず、こういうジャンルで書きたいということがあった後に、主人公のキャラクターを作っていく感じですか。

実はあまりキャラクターからアプローチはしていないですね。

例えば『小説家になろう』における異世界転生系の場合、あるフォーマットに対して「どういうキャラクターがおもしろいか?」という命題を用意して作られている方も居ますし、実際いろんなアプローチがあるかと思います。

ですが、私の場合は、最初に世界観とストーリーから作り、そこからキャラクターを作っていく形で作らせて頂いてます。

——書籍用の原稿と掲載作品は違いなどありますか?

空白の使い方が違います。紙の書籍だと空白や空行を多用しページ数を増やすとお値段も高くなり、コスパが悪いと感じられかねないかなと思っています。

逆にサイトでの掲載作品は、コストを気にせず贅沢に空行や余白スペースを使えますので、スマートフォンでの読みやすさを最優先にしています。

スマートフォンだと上から下に降りていくので、一文が長いとどうしても視線がZ字移動する形となり、リズムが悪くなったり疲れを感じられる方が居ます。ですので、長文を分解して一文をところどころ短くしたり、こまめに行間を空けたりしています。

この際の基本ルールとしては、会話文2つプラス地の文というのが僕の中での1セットになっていまして、その後に空行を入れるルールにしています。


——デバイスというか、見るメディアによって最適な区切りなど、意識されていますか。

以前、とある学校でお話をさせていただいたことがあるのですが、その際も「本とはデバイスが違うから、今だとこういう文章の区切り方も一手ですよ。」という形で、講義をしたことがあります。この際はメディアによって適した文章の作り方があるという話をしました。

——『小説家になろう』のときは『小説家になろう』で、読みやすいということを意識していましたか。

『小説家になろう』に『無職転生』という作品がありますが、あれはまさにWEB小説として現在のメディアやデバイスに沿った文章と感じていて、本当に素晴らしいと思います。作品の面白さプラス、読みやすいという作り方をすごく意識されている印象で、すごく学ばせていただきましたし本当に尊敬しています。

——確かにサイト自体のルールのようなものがあるかもしれません。

あるかもしれませんね。それにどこまで沿えるかというのは、結構、大事なのではと思っています。

もちろんそれがお約束のようになった頃には、そのルールを逆手に取った作品が現れてくるかもしれませんので、そのあたりにも注目したいところですね。

LINEノベルに期待すること

——『LINEノベル』に期待することはありますか。

『小説家になろう』にはお世話になりましたし、現在も非常に感謝しています。

ただ現状において、『小説家になろう』ではどうしてもサイト文化的に、ある程度の部分で一定ジャンルに視線が集中しやすい傾向があるのかなと感じています。

『LINEノベル』には、もっと幅広いジャンルが出てくるようになって欲しいと思っています。これまでウェブ小説になかったジャンルを含めて、色々なジャンルの人気作品を出していただけたらと期待しています。

——多様なジャンルの作品を読み手に届けていけるようにしていきたいです。

はい、ぜひ『LINEノベル』には新しい文化の担い手になってほしいと思います。

あと『LINEノベル』の場合、サイトではなくアプリという形で、どのような人に届くのか意外と予想がついていませんので、そのあたりも実に楽しみにしています。特に今回アプリで読んでくださる方は、今まで僕の作品に触れていなかった方も多いでしょうし、そんな方々に届くのではないかという期待感があります。

その意味においても、どのようなユーザー層に届くのかという意味で、僕は今回のアプリに期待しています。

——投稿ユーザーの方がこれから出てくると思います。先輩としてこれから投稿される方に一言いただいてもよろしいですか。

小説投稿サイトというものは、その場に集った一人ひとりの読者と投稿者が文化を作り上げていくものだと考えています。ですので、作品の作り手側としては、これから投稿される皆さんと一緒に素敵な“新しい文化”を創って行ければと思っています。

ぜひ楽しみながら、一緒に頑張っていきましょう!