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2019年8月5日、LINEノベルよりLINE文庫・LINE文庫エッジの2レーベルが創刊します!

そこで、書籍を刊行されるLINEノベルオリジナル作家のみなさんへ特別にインタビュー企画を実施。今回はライトノベルレーベル"LINE文庫エッジ"から8月に刊行される『項羽さんと劉邦くん』を執筆された春日みかげさんにお話を伺いました。

最初の執筆は黒歴史化?「中学時代に小説を書き始めました」


――最初に小説を書き始めたのはいつ頃ですか? 

春日:中学生の頃に中2ノートみたいなものに書き始めたのが最初でした。そのときのノートが今公開されたら恥ずかしくて死ねる……。ノートは多分捨てたと思います。最初は漫画を書いていたんですが、いつまでも絵がうまくならないので諦めたんです。
当時はそんなに絵が上手い人が周囲にいなかったんですけれども、多分これは滅茶苦茶上手くならないとプロにはなれないなと途中で気がつき始めて。

 

――途中から漫画から小説に移行していったんですか?

春日:小説なら字さえ書ければ何とかなるんじゃないかなと思いまして。漫画に挫折して小説を書く作家って結構いるんです。

 

――最初、書き始めた時のテーマはなんでしたか?

春日:書き始めは、今でいう二次創作です。みんな中学生の時はそうだと思います。
書いた作品を友人に見せて、鼻で笑われてトラウマになったりとかもありました。「こんなこと考えてたんだ……」というような反応で。もうそれからは「見るな!」みたいになっていきました。


――なるほど。隠す感じだったんですね。 

春日:自分が青春時代を過ごしていた頃って、オタク趣味というだけで肩身が狭かったんです。最近は全くそんなことはないらしいので、いま生まれてきたらもう少し楽しい青春時代になっていたと思うんですけれどもね……。


――いつもどんな時間に作品を書かれていますか?

春日:普段は朝に書いています。朝6時ぐらいに起きて、8時から原稿を書いて昼の12時ぐらいに終われたら終わるという感じです。年齢的に徹夜すると身体がもたないんです。夜は11時ぐらいには寝ますね。中学時代は徹夜でずっと書いていましたけどね。一晩で大学ノート一冊分とか。

若い時はどうかしていた、というような感じでした。もしも、今若かったらネット小説を好き放題書くんですが、体力的には目の前の仕事の原稿を書くのでいっぱいいっぱいな感じです。


――小説を書いていて筆が進まない時はありますか。

春日:いや、ないですね。ただ、その結果「何かよく分からないなぁ」とか言いながらとりあえず書いちゃうことがあります。満足いかないものが上がることがあるので、まるっと捨てることはありますね。

「項羽さんと劉邦くん」物語の始まり


――今回の作品はどこから始まった?

春日:本当は、編集の方から「何か中国モノを書いて下さい」と言われたところから始まりました。実際始まったのは、2年前じゃないですかね。

編集:「何のネタならすぐ書けますか?」と聞きました。

春日:最初は『水滸伝』をやろうって言われたんですけど、あれはそもそも108体のキャラクターを出すことに意味がある話だから、ライトノベルで『水滸伝』はやるのは無理があるなと思ったんです。いくつか案が出た中で「項羽と劉邦を題材にするのはどうか?」という話をしました。キングダムネタの漫画が増えてきた時だったんです。

編集:あの時は「今、歴史モノっておいしいネタだよね」という流れがあった気がします。


――本作の中で力を入れて書いたぞ、みたいなところとかって教えていただけますか? 

編集:ハーレムをやりましょう、と話をしました。

――やっぱりハーレム願望みたいなのがあるんですかね、皆さん。

春日:個人的には一対一の方が好みですけれど。実はこの作品は、武将を女の子にしているだけで、大体史実通りなんです。主人公である劉邦の性格の大らかさとか、ニート具合とか。司馬遷が書いていることが本当の話だという前提ですが。


――作品内に書かれている史実は、元々頭の中に入っていらっしゃったんですか。 

春日:そうですね。誰が項羽と劉邦を書いても、そういう話にしかならないと思います。元の歴史がある中で、以前はキャラクターや設定をひねることもあったんですけど、ひねらずにそのままやったほうが実は面白い、ということに途中で気がついたんです。あまり元の史実のイメージから外れないほうがいいという。思い切って外すと、逆に受けないことが……。

 

――あるんですね。

春日:あるんです。「全然違うじゃない!」みたいな感じになっちゃうので。だから、実は『項羽と劉邦』のキャラ立てはもう2,000年前に終わっていて、我々はそれを今二次利用させていただいているという感じです。

 

――歴史と併せて読んだら、より楽しめたりするかもしれないですね。

春日:もしかしたら「そのままじゃないか!」と怒るかもしれないですよ(笑)。
でも、そうですね。元ネタを知っている人と初めて読む人だとおそらく大分印象が変わる話だと思います。
初めて読む人だと、多分なろう系(※小説家になろう)で、中国を舞台にハーレム物をやってる、という感じなんですけれども、歴史を知っているとこの先一体どうするつもりなの? みたいな裏で続いていく部分も含めて楽しめると思います。だから、色々な読み方が出来ます。


女体化は江戸時代からあった!? エンタメとしての二次創作


――なるほど……。春日先生はお仕事で史実を調べられるようになったんですか? 

春日:いや、趣味なんです。逆に言うと学術的には全然なんです。
生まれて初めて、コーエーの「三國志」シリーズのゲームをやった時、学校に行くことを忘れちゃったんですよ。徹夜で攻略しないと気が済まなかったんです。気がついたら三日三晩「三國志」をやっていました。
諸葛孔明とか関羽とかを家臣にして使ってゲームできるというシステムで……。
元々は歴史漫画が好きだったんです。それがゲームになった時に、我慢できなくなったんです。子供の時から横山光輝の『三国志』が家にあったんです。おそらく、親が歴史オタクだったんでしょうか。司馬遼太郎の小説とかも大量に本棚にありました。


――なるほど。日本史も中国史も両方お好きという形なんですね? 

春日:どこの国でも歴史は全部好きですね。


――真面目に歴史を書くのとエンターテインメントとして読者の方に届けるのは変わってくるのでしょうか? 

春日:歴史好きの読者はシリアスに書いているほうが「ああ、史実っぽい」という感じで喜んでくださいますが、多数の読者に読んでもらいたいと考えると、そのまま史実を書くだけだと難しい部分があるんです。
女体化は読みやすくするための一つの方便みたいなものですよね。
以前、武将の女体化について誰がどこで思いついたのかを調べてみたら、江戸時代にはもう既に『水滸伝』とか『三国志』の女体化が流行っていたわけです。


――江戸でも二次創作があったんですね。

春日:ええ、普通にありました。例えば『南総里見八犬伝』を書いていた馬琴が『水滸伝』の女体化モノを既に書いてたんです。「ああ、もう全て先人がやり尽くしていた道だったんだな」と気づき、それからあまり気にしなくなりました。


トレンドへどう向き合っていくのか


――書かれるときにトレンドを意識されたりしますか?

春日:流行は意識しますね。好き勝手書いているだけでは読んでもらえないじゃないですか。ある作品では趣味丸出しで好きにやってみたんですが上手くいかなかったこともあります。今作はLINEノベルさんの公式作品ということを特に意識しながら書いています。
やっぱりネットでやったほうが便利だなと思います。特にライトノベルはネットですぐ発表する方がいいと思うんです。まず、企画会議で1年、企画を変えるのでプラス1年とか、そんなことをやっている間にトレンドが変わってたりするので。


――届ける相手の文法というか、ルールみたいなのを意識して書かれているということですね。

春日:そうです。ただ、自分はヤマグチノボル先生の『ゼロの使い魔』の大ファンなんです。
初めて読んだとき、びっくりしたんです。「何だこれ、面白い!」と思った。ヤマグチ先生が本当にやりたかったことはこれだ、と書いたのが『ゼロの使い魔』だったそうなんです。

――その当時は異世界は流行っていなかったんですか?

春日:学園モノしかなかったですね。

編集:学園モノ主流のときに……。

春日:十数年前のライトノベル業界は学園モノしか書かせてもらえないし、読んでもらえなかったんです。そこに突然、『ゼロの使い魔』が出てきて「何だ、これ!」と本当に驚きました。『ゼロの使い魔』から始まった異世界モノが、こうしてネットを制覇したわけですから、やっぱりヤマグチさんが正しかったんです。


――やっぱり1つの作品が流れを変えるというのがあるんですね。

春日:びっくりしました。何かものすごく久しぶりに異世界モノが来たというのが一つと、異世界モノって、本来もう少しシリアスに書くものだったんですけれども、ヤマグチ先生は何か吹っ切れていて。本当に自由に書いているので面白いんです。通した編集者が偉かったんだと思いますよ。

これから小説投稿サイトへどう向き合っていくのか


――LINEノベルにこれから投稿する方へアドバイスをいただいてもよいでしょうか? 

春日:自分はネット投稿をほとんどやったことがなくて、こちらから教わりたいぐらいです。毎日小出しに更新していくのと、一冊にまとめて出すのでは、書き方が違うと思うんですよね。


――そうなんですね。

春日:もう一冊単位で書く癖がついちゃっているじゃないですか。でも、スマホとかだと一章ずつ読んでいくという感じで、読み方も全然違うんです。
自分の書く作品は、大体350とか400ページで一話じゃないですか。ネットでいうと、10ページとか20ページで1話とかの分量です。今回の作品は、割と短いスパンで一話ずつ終わるようにしているんですが。そうすると大きいカタルシスを作るのが難しくなってくる……。その辺の技術とかを正直、教わりたいという感じですね。


――読むメディアによって話の作り方が変わってきているのでしょうか。 

春日:同じライトノベルではなく、もう全く別のものに進化したと思うんです。だから正直、自分はもう劇画が出てきて駆逐されつつある昔の漫画家みたいな立場だと思ってます。手塚治虫先生でさえ、劇画が出た時にすごく苦しんでいましたし。そんな感じで、こちらちから偉そうになにか言える立場ではないですね。


――作品を書かれるときは、何か全体の構成を決めてから書かれるみたいな感じですか。それとも……。

春日:一冊とか。あと、物によっては二冊分、三冊分、長いパートとかになると数冊分で1話とか。そういう単位で構成を決めてから書きますね。どちらかというと映画の作り方に近いです。ちょうど長さ的に、ライトノベル一冊が映画一本ぐらいです。なので、アメリカで書かれた映画の脚本の書き方の本で翻訳されているやつをいっぱい買って、それをベースにしてずっとやっていたんですけれども。


――そうなんですね。 

春日:今のネット系の小説だと、どっちかというとアメドラみたいなものになるというか。


――単発のドラマみたいな感じでしょうか? 

春日:そうですね。短いストーリーが積み重なって、どんどん長くなっていって。構造や作り方が全く違う。


――確かに性質が違いますよね。 

春日:今回も正直、その辺の勝手がわからないので、恐る恐るチャレンジしている感じですね。どっちかというと新人がやったみたいな感じで、こちらから何も教えられることなんてない。作家同士の飲み会でも、周りのなろう系作家さんにずっと教わってばっかりで、ノートにいっぱいメモをとっているんです。読んでいるだけじゃわからないことってあるんですね。


――そうなんですね。これから小説投稿サイトにチャレンジしていかれる、ということでしょうか? 

春日:はい。『織田信奈の野望』が完結するまではやめておいたほうがいいと言われて、抑えていたんです。とうとう完結したので、これからは頑張らないといけないんだけれど、やっぱり作り方が難しい。
これからどういう路線を目指して。まだどういうものになっていくのか、自分でも全然わからないです。

インターネット上の小説って、直接フィードバックが来るじゃないですか。なので、そのときそのときのフィードバックに応えて展開をフレキシブルに変えていくような、読者さんが喜んでくれる方向を進んだほうがいいんじゃないかなと思ってます。


――なるほど。今日はありがとうございました。 

春日:ありがとうございました。


書籍情報

内容紹介
名もない一人の社畜が死にました――。
しかし、彼は赤龍の導きにより、古代中国に似た異世界へと転生させられ、劉邦という名前を得る。
だが劉邦は社畜に捧げた人生を取り返すべく、スローライフを満喫することに決め、幼なじみたちとのんびり過ごしていたが、姫将軍・項羽との出会いで一変する。
武人として育った項羽は劉邦の不思議な魅力に惹かれ相思相愛となるが、二人の間には身分という大きな溝があることに気づかされる。
劉邦は項羽に相応しい男になるべく、新たな旋風を巻き起こしてゆく!

著者について
著者:春日みかげ
「織田信奈の野望」で小説家デビューし、アニメ化される。その後「ユリシーズ ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士」もアニメ化されるなど活躍中。

イラスト:wingheart
ライトノベルのイラストやゲーム原画・背景画など、あらゆるジャンルから仕事をこなし、「絵師100人展」にも毎回参加していたりと、話題沸騰中のマルチイラストレーター。

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