三門鉄狼『異世界サバイバル』タイトル画像


LINEノベルオリジナル作家のみなさんへのインタビュー企画。
今回はライトノベルレーベル"LINE文庫エッジ"から11月に刊行される『異世界サバイバル ~クラスから追放されたけど、スキルの力で生き延びる~』を執筆された三門鉄狼さんへお話を伺いました。


異世界サバイバル ~クラスから追放されたけど、スキルの力で生き延びる~』あらすじ
ある理由からクラスで仲間外れにされていた仁飼睦樹(にかい・むつき)はクラスメイトと共に異世界に転移していた。
校舎が廃墟となり、ファンタジー作品に登場するモンスターのような生物が生息する未知の世界。
混乱する睦樹だったが、転移した生徒たちにはなぜか元の世界での特技や知識を元に『スキル』が与えられていた。
飼育係をさせられていた睦樹は「動物の言葉がわかるだけ」と思われて、異世界でもひどい扱いを受けるが、実はこのスキル、レベルを上げていくと、とんでもなく有用性の高いものであることがわかり――! ?


緻密に練られたコンセプトと、キャラクター設定に込められた意図

今回の作品『異世界サバイバル ~クラスから追放されたけど、スキルの力で生き延びる~』のコンセプトはどのように決まりましたか?

コンセプトを一言でいえば“サバイバル”になるのですが、分解すると三つの題材に分けられます。
一つ目は異世界転移です。WEB小説投稿サイトでは定番的な展開ですが、本格的に取り組んだことのない設定だったので、やってみたいと思っていました。
書籍書き下ろしの場合は一冊完結のつもりで話を作っているので、転移や転生ものをやるにしても『主人公が世界の仕組みを解き明かし、力をつけて冒険を進める』という話をじっくりやるのは難しかったんです。今回は連載形式になるということなので、せっかくなら挑戦してみようかな、と。

二つ目はデスゲームです。これは四年くらい前に、別レーベルの担当さんと企画を練っていたことがあったのですが、最終的に「ラノベでやるのは難しいね」という話になって、流れてしまったんです。
今回、LINEノベルさんの方からお話をいただいた際に、何をやろうか担当さんと話しつつLINEマンガを見てみたら、デスゲームものの作品がけっこう並んでいたんですね。スマホアプリでの掲載だとこういう作品の方が読まれるのかもしれないと思ったので、担当さんに持ち掛けました。

三つ目はモンスターパニックです。“デスゲーム”といっても、大雑把に分けて二パターンあります。
一つは登場人物同士で緻密な計算をして戦うタイプ。もう一つは過酷な状況でどんどん脱落者が出るタイプ。
どちらを取り入れようか考えたときに、連載という形であれば、ストーリーはあまり複雑化しない方が良いだろうと思いました。そこから主人公たちをどんな状況下に置くかを考え、『異世界の無人島で周りをモンスターに囲まれたら、先を引っ張っていくようなストーリーが組めるのではないか』という結論に行き着いたんです。ゴジラやガメラ、ジュラシックパークやサメ映画などのモンスターパニック要素が好きなので、すごく楽しかったですね。

ちなみに一人で構想を練ったかのように話していますが、実際には担当さんと細々とやり取りをしながら、色々な要素を少しずつ積み重ねて現在の設定に固めていきました。

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――様々な構想が組み合わさって完成した作品なのですね。キャラクター設定はどのように練っていかれたのでしょうか。

“異世界の無人島でサバイバル”というコンセプトに基づいて、どんなキャラクターを放り込んだら楽しいかを考えながら決めていきました。
最初に、現代日本でその人物が属していた委員会や部活、それから特技などが反映されたスキルを発動するという設定は決まっていたので、そのスキルから性格を逆算してキャラクターを固めていきました。
主人公たちのスキルが攻撃系の場合、彼らが成長して強くなることでモンスターが相手にならなくなり、インフレ展開に陥ってしまうので、自由度の高そうなスキルとして<テイム>という仕組みを取り入れたんです。そうすると、主人公は飼育委員が相応しいかな、と。同時に現代での生活も想像して作り上げていきました。
主人公のスキルが非攻撃系スキルなら、いっそのこと仲間も全員非攻撃系にしてしまえ、とノリで決めたのですが、そのせいでピンチのシーンをどう乗り切るか考えるのに苦労しましたね……。
逆に主人公たちと別行動をとるクラスメイトたちのメインは攻撃系で固めて、それぞれが違った形でサバイバルをこなし、その結末がどうなるのか……そういう発想で個々のキャラクターを練っていきました。

――テイムによってモンスターを懐柔する=主人公の飼育員スキルが発動と、攻撃的なスキルで強さを描くのではなく、テイムを取り入れることで表現する仕組みがとても面白いです。特に思い入れの強いキャラクターはいますか?

クラスメイトたちは書いていて楽しかったですね。“嫌な奴”を書く機会があまりないので。
普段は読んでいて不快になるような性格のキャラは避けることが多いのですが、デスゲームならいいかなと思って書いてみました(笑)。

主人公にとって彼らはある意味敵なんですけど、ただやられてスッキリするような“敵キャラ”にはしたくなかったんです。ロクでもない言動をするけれど、そこには彼らなりの行動原理があって、その原理が主人公と噛み合わなかっただけなんですよ。見方を変えれば主人公ではなく、彼らの方がヒーローになっていたかもしれない。特に東堂翔平はいい味を出してくれるキャラに仕上がったなと思っています。

でも一番カッコいいのはクロですね。
 
――主人公とクラスメイトたちの、“噛み合わない行動原理”も注目要素のひとつかと思うのですが、三門さんが思う一番の読みどころを教えてください!

本作の主役はある意味で“島”そのものです。主人公も含めて、登場人物たちは島の環境に翻弄され、偶然助かることもあれば、命を落としてしまうこともあります。
ストーリーの大きな流れがあるというよりは、ほんのちょっとしたことで流れが変わってしまうので、プロットの段階では生き残る予定だったキャラが結果的に死んでしまったり、逆に生き残る予定だったキャラが死んでしまったり……書いている最中でもそうした変化が起きていた作品です。
なので読者のみなさんも「ここでこういう事態が起きなかったら、あの子はどうなっていたんだろう?」と“if”を想像しながら読んでいただけると、より楽しめるのではないかと思います。

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三門鉄狼を形成した三人の作家

――最初に小説を書き始めたきっかけはなんですか?

高校生のときに、上遠野浩平先生の『ブギーポップは笑わない』を読んで衝撃を受けたんです。それが生まれて初めて読んだライトノベルでした。当時はまだ“ライトノベル”という呼ばれ方はしていなかったんですけど、「こういうアニメみたいなストーリーを書いてもいいんだ。それなら自分も書きたいことが山ほどあるぞ」と思って。
所属していた文芸部で毎月部誌を発行していたので、連載を始めようと思い立ちました。休み時間に、ノートに手書きで物語を書いて、帰宅後にワープロで清書して……B5で毎月10ページ、多いときは30ページくらい書いていました。ここでかなり文章を書く習慣が鍛えられたような気がします(笑)。
高校卒業後は、年1本か2本くらい新人賞に応募するようになり、14、5本目で賞をいただきました。
 
――三門さんが影響を受けた作家さんや小説を教えてください。

京極夏彦先生、森博嗣先生、清涼院流水先生が、自分の中では神のような存在です。この方たちがいなければ、三門鉄狼という作家はこの世に存在していません。

京極先生の作品からは世の中の見方を学びました。言葉というのは人が作り上げた概念、いわば虚構です。虚構は現実を説明するのに非常に有効的ですが、ときに一人歩きをしてしまいます。現実と虚構の差が大きくなりすぎると、人は現実を離れ虚構の中に生きてしまいますが、どんな人にもこの“差”は絶対に存在します。現実そのものをそのまま生きられる人などいない……だからこそ、自分が抱えている現実と虚構との距離を測っていかなければならないのだと思っています。京極先生の作品に直接書かれていたわけではありませんが、僕自身はそう解釈して頭の片隅に置いています。

森先生の作品からは、人生の過ごし方を学びました。もちろん作品も大好きなのですが、特に影響を受けているのは日記兼エッセイシリーズです。(※過去に幻冬舎から5冊、メディアファクトリーから13冊、現在は講談社から刊行中)
森先生の日常生活と物事に対する様々な考察が綴られているのですが、読んでいると偏見や思い込みがどんどん剥がされていきます。「こうしなければ」と思い込んでいたことに対して、「なにもその通りにしなくてもいい」と指摘してくれるんです。

清涼院先生の作品からは、創作に対するスタンスを学びました。有名なのはJDCシリーズですが、それ以外の作品も含めて現在までの活動を辿っていくと、創作活動は自由でいいのだと思えてきます。その自由とは、ひとつの作品の中で定番のジャンルに縛られなくてもいいということでもありますが、どんなジャンルに挑戦してみても良い、ということでもあります。
僕はいただいた依頼に対して「やったことがない、できないかもしれない」という理由で断ることはありません。これまで全く興味のなかったジャンルでも、楽しさを見出せるかもしれないからです。
美少女文庫さんからの依頼はまさにそのタイプで、おかげで自分の新たな好みを発見することができました。

――三人の作家さんの生き方や考え方が三門さんにどれほどの影響を与えられたのか……とてもよく伝わってきます。では、これまでの執筆活動の中で、苦労したことや嬉しかったことを教えてください。

苦労、とはまた違うのかもしれませんが、デビュー後しばらくは手持ちの作業がなくなって、担当さんからの連絡待ちの日が続くと「俺、今無職だ」と焦ることがありました。
今はそうならないようにスケジュールを調整して、それでも手が空いたらWEB投稿用の小説を書いたりするので気にならなくなりましたが。

嬉しいのは、自分の考えたキャラや風景がイラストレーターさんの手によって素晴らしい絵に仕上がったときです。自分の頭の中だけにあったものが、他の人の手によって自分の外側に作られる感覚はとても不思議で……イメージ通りの絵だと嬉しいですし、イメージ以上のものが上がってきたときは自分とイラストレーターさんの感性の違いを感じられて嬉しいです。

――作品を書いていて筆が進まなくなることはありますか?そういうときの打開策も合わせて教えてください。

小説を書くというのは、目の前に展開している物語に集中するのと同時に、自分の知識を活用するために、あらゆる方向の記憶へ意識を拡散するという、矛盾した状態を保つこと、あるいは交互に切り替えることだと思っています。なので書けないという状態は、“集中と拡散の両立”がうまくいっていないということではないでしょうか。

「次の一行が出てこない」というときは、物語に集中しすぎて意識の拡散ができていないということなので、トイレに行ったり、飲み物を飲んだり、小休憩を挟むことで再び書き出せることが多いです。

「今日は調子が出ない」というときは、脳のパフォーマンスが落ちていて集中と拡散を制御できていない状態です。疲労や体調不良などコンディションの問題なので、そのときにできる作業に切り替えるか、きっぱりと休みます。

「ずっと書けない」という、いわゆるスランプに陥ったことはないのですが、そういう状態にならないように“テンションで執筆しない”“スケジュールは常に余裕を保つ”“週二日は休む”など、メンタルの安定を心がけています。

――なるほど。一口に“書けない”と言っても、様々なパターンがあるんですね。普段はどのような時間帯やシチュエーションで作品を書かれているんですか?

毎朝6時に起床して、身支度を整えてから小説の執筆を始めます。間に何度か休憩を入れつつ大抵は午前中、遅くとも14時くらいには仕事を終わらせていますね。デビュー後数年は色々な生活と執筆パターンを試してきましたが、今はこれで安定しています。

仕事場所は家です。喫茶店に行って書いてみたこともありますが、最終的には効率があまり変わらなかったので、家で書くスタイルを保っています。

――とても健康的な執筆スタイルですね!三門さんが作品を書き続けていくために心掛けていることはなんでしょうか。

大雑把に言うと、自分を追い込まないことです。
先ほども少し触れましたが、僕はテンションで執筆をしません。大体一日に7,000文字程度書いているのですが、クライマックスの盛り上がる部分でテンションが上がると10,000文字を超えることもありました。でもそうすると、自分はいつもそのくらいのペースでできると勘違いしてしまって、いつの間にか「10,000文字書かなければならない」と気持ちがすり替わってしまうんですよね。だから、予定量を書いたらそこで止めて、空いた時間を読書に充てたりして執筆量をセーブしています。

それと、スケジュールに余裕を持たせるようにしています。これは担当さんのご理解とご協力ありきなのですが、僕の場合、二週間で終わる分量の締め切りは三週間後、場合によっては一ヶ月後に設定してもらっています。そうすることで、体調が悪いときにはきちんと休めますし、割り込みの仕事や自然災害など不測の事態でも対応ができます。週二日の休みも、リフレッシュと緊急時のバッファになっているんです。

もちろん、締切ギリギリまで自分を追い込んだり、勢いに乗って書き進めた方が良いものが書けるという作家さんもいらっしゃると思いますが、僕はそのスタイルだと続かないし、良い作品に仕上がらないので、毎日淡々と進めていくのが性に合っています。


自己満足のために、軽い気持ちで――小説家を目指すあなたへの応援メッセージ

――これからどんなことにチャレンジしていきたいですか?

美術や博物館に興味があるので、現在そちらを勉強中です。小説の仕事とは関係なく始めたことですが、その方面の知識を活かせる執筆のお話があれば嬉々として書くと思います。
それとWEB投稿を始めたので、長い話を書きたいだけ書いてみたいとも思っています。
お金になるかどうか分からないですが、ちょこちょこ進めていきたいですね。

あと、『異世界サバイバル』と同月にファミ通文庫さんから発売予定ですが、みなとカーニバルさんのパソコンゲーム『和香様の座する世界』のノベライズをやらせていただきました。未知なる経験でしたが、やってみたらすごく楽しかったので、今後もこういう仕事にチャレンジしていきたいと思っています。

――かなり盛りだくさんですね!楽しみです。では、LINEノベルに期待されていることを教えてください。

WEB小説の投稿サイトやアプリは、これからまだまだ増えてくるのではないかと思っています。
その中でもLINEノベルにしかできないことというのは、かなり明確に打ち出されている気がするんです。今思いつくのだと、複数の出版社さんとはじめから提携を組み、オファーの仕組みを整えていく、などでしょうか。そういう部分が差別化されて、投稿する側にとって作品発表形式の選択肢が増えていけば嬉しいな、と思っております。

――ありがとうございます。作品を期待されているみなさまに一言メッセージをお願いします。

まだ本作を読まれていないという方には、普段とちょっとノリの違う三門鉄狼を楽しんでいただければと思います。
アプリですでに読んだという方には、マニャ子先生の素晴らしいイラストを書籍で楽しんで欲しいです。クールな画風で異世界の過酷な雰囲気を存分に味わうことができると思います。
僕の作品を読むのが初めてという方は、気に入りましたらぜひ他の作品もチェックしてくれたら嬉しいです。

――最後に、これから投稿するユーザーのみなさまにアドバイスや応援の言葉をいただけますでしょうか!

小説を書く理由やスタイル、そこに込める思いなどは人それぞれなので、アドバイスを送るのはなかなか難しいのですが、それでもあえて言わせていただくなら……。
小説は書くのも読むのも楽しいですし、かなり気軽に始めることができます。たくさん読めば書きたいことが増えるし、書けば書くほど読むときの楽しみも増します。
評価やランキング、感想は気になるかもしれませんが、最終的には自分が満足するかどうかが重要だと思うので、自己満足のために軽い気持ちで始めてみてください。



書籍情報

著者について
著者:三門鉄狼
ライトノベル作家。第1回メガミノベル大賞で銀賞、第5回MF文庫Jライトノベル新人賞で佳作を受賞しデビュー。

イラスト:マニャ子
イラストレーター。主な担当作品に「ストライク・ザ・ブラッド」(電撃文庫)「ネクストライフ」(ヒーロー文庫)など。

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