
LINEノベルオリジナル作家のみなさんへインタビューする本企画。
今回はライト文芸レーベル"LINE文庫"から9月に刊行された『異世界洋菓子店フォックステイル』を執筆された月夜涙さんへお話を伺いました。
――今作のコンセプトや、物語が決まった経緯を教えてください。
元々美味しいものが好きで、食べ歩きが趣味でよく行っています。そのときに料理そのものの味も大事だけど、見た目や食べるときの雰囲気が味に影響があるなと感じました。なら、今食べているケーキが一番美味しく食べられる環境はどんなところだろう。そう考えたときに自分の中で出てきたイメージは海外だったのですが、ちょっと日本の要素も入っていて……もうこれは異世界しかないなと思いました。このイメージを小説に描いてみたい、そう考えました。
――その時のケーキがきっかけで、洋菓子を選んだのでしょうか?また、食べ物の種類や切り口が幅広いと感じたのですが、お菓子という題材に興味があったのでしょうか?
ケーキの食べ歩きはライフワークです。今一番気に入っているのは、「PATISSIER INAMURA SHOZO」のサバランです。
上野の山のモンブランが有名なお店ですが、甘い洋酒をたっぷり染み込ませたサバランが絶品です。今回それを参考にしたお菓子を作中に出しています。
――ライトノベルというジャンルで活躍されている月夜さんですが、今回ライト文芸に挑戦しようと思ったきっかけや実際に取り組んでみた感想を教えていただけますでしょうか。
自分の世界を広げるためです。まだライトノベル作家としてデビューして3年目なので、自分自身で得手不得手を決めつけたくありませんでした。
なので今までと違う武器で戦おう、そう思いました。ただ自分の好きなものを活かせるもので戦いたく、考えた結果この『異世界洋菓子店フォックステイル』に落ち着きました。
ちょうど美味しいケーキを異世界で食べたいと思っていたので(笑)。
――実際、ライト文芸を執筆するにあたり書き方に気を付けたことやライトノベルから変えたポイントなどありましたら、教えてください。
ライトノベルより、心理描写を重視して描きました。ライトノベルは作中で起こる出来事……イベントを楽しむものだと思っているのですが、ライト文芸は登場人物の心の変化を楽しむものだと思っております。
――本作の主人公や登場人物について、ご紹介いただけますでしょうか。
今回の主人公・淳は頑張り屋で、なんでも自分で抱え込みすぎる人です。自分の世界に閉じこもりがちで視野が狭い……それでも彼自身が優秀だからこれまでなんとかやってこれてきた。
そんな彼が自分ひとりではどうすることもできない異世界にやってきて、初めて自分自身の欠点と向き合うことになる。彼がどう変わっていくか、あるいはそれでも変わらない信念はどこにあるのか……ぜひ読みながら感じていただきたいです。
――月夜さんが描く、男性主人公は他作品でも芯のあるカッコよさが魅力的でもあり特徴でもあると思っております。何かこだわりがあるのでしょうか?
頭が良くて頼りになる、そんな理想の存在として描いています。自分自身が好きになれる、そんな主人公を意識しています。だからこそ、魅力的に感じてもらえるのではないかと。
――今回特に力を入れて執筆したポイントや見どころなどありましたら教えてください。
頭がお菓子が美味しそうに感じないと物語として成立しないので、読むだけで美味しさが伝わるように力をいれました。食べてみたいなと思ってもらえると、嬉しいです。
――製菓手法についても詳しく書かれておりますが、お菓子作りの勉強をされていたのでしょうか?
お菓子作りが趣味なので、その知識を活かして執筆しました。
――カバーイラストについて、感想を教えてください。
イケメンだなと思いました(笑)。
ライトノベルのカバーイラストだとヒロインが必ず入るので、新鮮に感じました。同時にこの作品らしいなと思いました。切符さんのイラストもライトノベルでしか見たことなかったので、新たな一面で驚きました。
――最初に小説を書き始めたきっかけはなんでしょうか?
もともと『フルメタル・パニック!』のアニメが好きでファンサイトをよく見ていました。
そこで二次創作に出会い、自分も書き始めたのがきっかけです。書いているうちに二次創作ではなく、一から作りたくなり自分で設定から考えるようになり今に至ります。
――小説を書き始めてから何年ほどでデビューだったのでしょうか?
中学生の頃から書き始めたので、デビューまでおよそ十年かかっています。
――デビューした経緯、デビューが決まったときのお気持ちを教えてください。
新人賞に応募していた作品が落選。せめて多くの人に見てもらいたいと小説投稿サイト「小説家になろう」へ投稿しました。
それがきっかけで書籍化のオファーをいただきました。
作品の供養のつもりだったので、とても驚きましたし嬉しかったです。
――元々小説がお好きだったのでしょうか?
『フルメタル・パニック!』のアニメをきっかけに、ライトノベルを知り好きになりました。
当時中学生だったのでお金があまりなく、長い時間楽しめる活字はお得だなと(笑)。
富士見ファンタジア文庫の受賞作を全て買うぐらいにはマニアでした。
――影響を受けた作品があれば教えてください。
やはり『フルメタル・パニック!』が一番ですね。それ以外ですと角川文庫『推定少女』、思春期特有の不安定な気持ち悪さが刺さり、とても好きでした。
――普段どのような時間に作品を執筆していますか?
毎日朝起きてからと昼食後、決まった時間に執筆をしています。そのときは他のことを一切しないで、集中して作業を行います。
――身体を動かすのもお好きということで、規則正しい生活を心がけていらっしゃるのでしょうか?
作家は体力仕事なので、体力が低下すると集中力が維持できなくなります。なので好きというより、より良い作品を書くために規則正しい生活と運動を自分自身に義務付けています。
――作品のアイディアはいつもどのようなときに思いつきますか?
常に書きたいものが溢れていて、そのときどきでどれを書くか。どれを組み合わせるか考えて選んでいます。
なので、思いつかずにアイディアを探すということはやったことありません。
――執筆していて、筆が進まないときはありますか?また、そのときはどのように打破していますか?
書きたいものを書いているので、筆が進まないという経験は今までありません。
――作品を執筆するときに大切にしていることはありますか?
自分が面白いと思えるかどうかを大事にしています。
自分自身が面白いと思えないものを世に出すつもりはありません。
その面白いと感じるものさしが古くなったり壊れたりすると、作家として死も同然。
なので面白いと感じる価値観をアップデートすることに時間を割いています。
――これからチャレンジしていきたいことはありますか?
作風を広げ、自分自身の可能性をもっと試していきたいです。
――小説を書きたいと思っている、もしくは投稿したことない人に向けてアドバイスがあればお願いします。
書きたいものがない人は小説家に向いていないと思います。
書きたいものがあるなら書けばいい、それだけです。
――本作を期待している皆さまに一言をお願いします。
優しくて甘い物語、是非楽しんでください。
――これから投稿するユーザーの皆さまに最後、一言をお願いします。
書きたいと思えるものを、面白いと思ったものをどんどん公開していきましょう。
内容紹介
