
LINEノベルオリジナル作家のみなさんへインタビューする本企画。
今回はライトノベルレーベル"LINE文庫エッジ"から9月に刊行された『勇者の君ともう一度ここから。』を執筆されたみかみてれんさんへお話を伺いました。
今回はライトノベルレーベル"LINE文庫エッジ"から9月に刊行された『勇者の君ともう一度ここから。』を執筆されたみかみてれんさんへお話を伺いました。
「人の心に訴えるようなファンタジーを書きたかった。」
——今回の作品のコンセプトはどのように決まりましたか?
様々な創作物を摂取しているうちに、貝の中で真珠が作られるみたいに自然にできあがっていきました。生まれて初めて読んだ物語が『ドラゴンクエスト4』の小説だったんですが、それ以降なにをしてても『勇者が世界を救うお話』が生成されてしまう人生を送っています。
——登場人物(主人公)のキャラクター設定はどのように決めていかれたのでしょうか?
主人公が後悔からやり直す物語というテーマがあったので、ジャンは失敗もしてしまうどこにでもいる普通の男の子として。また、その対となるセラは世界を救うほどの立派な勇者として描いています。互いの徳に高低差があるペアが好きなんです。
——本作の中で特に思い入れのある登場人物(好きな登場人物)と、その理由を教えてください。
やはりりジャンですね。女の子のためにがんばる男の子が好きです。そんなジャンに愛憎入り混じった感情を向けるサイラスも、他のキャラとは違った立ち位置で気に入っています。
——作品を彩ってくれた、えいひさんのイラストについて、何か感想があれば教えてください。
もともとが人の心に訴えるようなファンタジーを書きたかったので、えいひさんなら間違いないだろうと思っていました。実際、表紙のセラの美麗さ、すごくないですか? 華やかなだけではなく、読者さんの感情を揺さぶる一枚絵だと感じます。
——確かにカバーのセラは吸い込まれるような印象でしたね! 特にお気に入りのイラストがあったら教えてください。
どれもとても美しいのですが、中でもセラがプロローグで穴の中に飛び込むところと、中盤に剣を抜いたセラの鬼気迫る表情ですね。文章が与えたいと意図したイメージを増幅して読者さんに届けることができて、えいひさんめっちゃいい仕事するな……と思いました。
——本作の読みどころを教えてください!
ジャンとセラが時にすれ違いながらも、共に手を取り合うまでの過程です。特にふたりが言葉を交わすシーンは、たとえただの立ち話であってもジャンは『もう二度と間違えないように』と全神経を集中させているので、セラとの一文一句に対して緊張しているジャンの振る舞いに注目していただければ幸いです笑
「箸にも棒にもかからない時期があった。」と執筆活動を語る
——みかみてれんさん個人についてもお話を聞かせてください! 最初に小説を書き始めたきっかけを教えてください。
人間って、好きな小説や漫画にオリジナルキャラクターを出すのが好きな生物じゃないですか(主語が大きい)。わたしもその例に漏れず、オリキャラ二次創作から入ったクチですね。そのあとすぐにオリジナル小説に移行し、以後、長い長い投稿生活を送ることになります。
——影響を受けた作家さんや小説はありますか?
ファンタジーで言えば、ミヒャエル・エンデ先生の『はてしない物語』と、前述の『ドラゴンクエスト』の小説シリーズですね。それ以降は、スレイヤーズ、オーフェン、フォーチュン・クエストと、お手本のような系統樹で影響を受けていきました。
——百合がお好きのようですが、ハマったきっかけはなんでしょうか?
えっ、急に? それ、君ここと関係あります? いやまあ、あの、大きなきっかけとしては『マリア様がみてる』なんですが、それ以前にも赤川次郎先生の『ふたり』など、女性が女性を想う気持ちを描いたものを見て、なんとなく好きだなあ、という気持ちになっていました。
——『マリみて』は名作です、個人的に白薔薇が好きですね。これまでの執筆活動の中で苦労したこと、嬉しかったことを教えてください。
苦労したのは、プロになりたいと漠然と執筆をしていた頃に、投稿作を出しても出しても箸にも棒にもかからない日々を送っていた時期ですね。当時は「辛い、辛い」と思っていたんですが、今になってみると、そのときの自分が続けていたからこそプロになってこうしていろんな作品を出版させていただく機会に恵まれているんだろうなあ、としみじみ嬉しく思います。
——作品を書いていて筆が進まないことはありますか?そういう時の打開策も教えてください。
筆が進まないときは3パターンありまして。自分がその場面でどういう感情を読者さんに抱いてもらいたいのかがわかっていないとき。これはいったん手を止めて、その作品を改めて読み返したりなどします。2つ目は、シーンが思った以上に面白くならなかったとき。発想や切り口の角度の問題が多いので、散歩したり読書をしたり気分転換しますね。最後に、集中力切れ。フィジカルの問題はもうどうしようもありません。なんかこう、だらけて回復を待ちます。
——普段はどのような時間帯やシチュエーションで作品を書かれているのでしょうか?
集中して時間が取れるときは、デスクトップに向かって一日中書いています。あまり時間が取れなかったり打ち合わせが入っているときには、ノートパソコンをもってカフェを渡り歩いていますね。
——作品を書き続けていくために心掛けていることはなんですか?
書いたら書いた分だけインプットすることですね。常に面白い刺激を受け続けていないと、自分の中にあるアイデアやモチベーションが枯渇してしまうと思っています。例えばわたしは人にオススメされた作品は全部買うようにしているんですが、その中でも今まで自分が知らなかった好みにぶち当たると「あっ、わたしもこういうの書きたい!」ってなって、執筆するモチベーションが一気に吹き上がるんです。同じように評判になった映画や小説、マンガなどはなるべく目を通すようにしています。時間の都合でゲームは積んでばっかりになるんですが!!
楽しく書くことが執筆の秘訣!
——さまざまなことにいつも挑戦しているみかみてれんさんですが、これからチャレンジしていきたいことはありますか?
小説、漫画原作と、今やっているものをもっともっと面白いものを作れるようにがんばっていきたいです。わたしは自分があまり手を広げすぎると失敗するタイプだと最近認識し始めたので、できることをより上手にできるように、コツコツと積み上げていきたいです。
——LINE ノベルに期待されていることを教えてください。
LINEノベルが登場したときに二種類発表されたCMでのワクワク感がハンパなかったので、ああいったなにか『新しい試み』をついつい期待しちゃいますよね。
——作品を期待されているみなさまにメッセージをお願いします。
『書店員、絶賛! この夏、最高の泣けるファンタジー』ってキャッチコピー、ハードルが爆上がりしてつらいんですが、続きを書かせてもらえるならがんばって書きます……。
——これから投稿するユーザーのみなさまにアドバイスや応援の言葉をいただけますでしょうか。
一番は楽しく書くこと。今はネット小説にもいろんな賞レースという『見返り』がありますが、見返りだけを求めて書き続けると、それが手に入らなかったときがめちゃくちゃ辛いんですよね(経験則)。なので、ただ書く行為の楽しさを忘れないようにしてもらいたいなあ、と……。やっぱりそこがなによりも大切だと思います。
小説を書くのって、楽しいよー!
書籍情報
内容紹介
書店員、絶賛!
この夏、最高の泣けるファンタジー
勇者セラフィルナは、己の命と引き換えに狂神を討ち倒し、世界を救った。
一方、かつて勇者と共に旅をしていた隻腕の青年ジャンは、片田舎にて後悔の日々を過ごしていた。剣神と呼ばれながら、彼は逃げ出したのだ。──たかが腕を切り落とされた程度で。
そんなジャンの下へ現れた王都からの使者が告げる。
「勇者はまだ生きている。世界と彼女を救いたければ私たちと共に来てほしい」
「……どうして俺なんだ」?
「キミに伝えたいことがあるようだった。もし会わないというのならば、聞くべきではない。恐らく、その言葉を永遠に背負うことになるだろうから」
亡くした腕の代わりに魔神器『ヴルムの真腕』を与えられ、救われなかった少女のために、ジャンは再び立ち上がる。
今度は逃げたりしない。最後まで彼女のそばにいるのだと。
狂神の呪いを浴び、心を失った少女の傍らに、腕を失った男が寄り添う。
未来は優しく、果てなく、幸せになれるのだと信じて。
──勇者の君ともう一度ここから。
今、最高の感動ファンタジーが幕を開ける! !
著者について
著者:みかみてれん
『勇者イサギの魔王譚(エンターブレイン) 』でデビュー。
『父さんな、デスゲーム運営で食っているんだ(少年エース・原作)』『おとめバレ(MFC キューン・原作 』などライトノベルや漫画原作多数。
イラスト:えいひ
イラスト:えいひ
『今日、となりには君がいない。 (講談社ラノベ文庫)』、『黒の星眷使い~世界最強の魔法使いの弟子~ (MFブックス)』、『ただ幸せな異世界家族生活 ~転生して今度こそ幸せに暮らします~ (GAノベル)』などでイラストを担当。