
LINEノベルオリジナル作家のみなさんへインタビューする本企画。
今回はライトノベルレーベル"LINE文庫エッジ"から9月に刊行された『翠竜のティリストリ』を執筆された寺田とものりさんへお話を伺いました。
――小説を書くようになったきっかけはなんですか?
もともと物語やキャラクターの設定とかゲームのアイデアなんかを夢想するのが好きで、そんなものばっかり書いてました。とにかく設定というか企画ごっこが楽しくて、オリジナルのゲームや小説やマンガの企画を夢想しては、ノートに書き溜めていたんです。時期的には中学生の頃からなので……そうですね、いわゆる『黒歴史ノート』というアレです(笑)。
――黒歴史あるあるですね(笑)。
本当のところは、黒歴史というわけでもないのですが(笑) 別に封印してませんし、今でも当時のアイデアやキャラクターたちは大切にしていますよ。
――では、そこから小説の執筆へとシフトしていくのですか?
いえ。そのうち、TRPG(テーブルトークRPG)のルールを作ったり、カードゲームを作ったりするようになって、そこから自然と、それらの世界を舞台に小説を書くようになっていきました。当時はパソコンではなくてルーズリーフにシャープペンでカリカリ書いていたのですが、いつかそういった作品もリファインしたいなと思っています。
――商業デビューすることになった経緯を教えてください。
ホビージャパンさんに企画を持ち込んで、優しい編集者の方に拾ってもらいました。恐れ知らずとはまさにこのことですね(笑)
――作品を作り上げる際、決まったやり方や段取り的なものはありますか?
決まった段取り、というのはありません。キャラクターから思いつくこともあれば世界観から入ることも、テーマが最初に決まることや、タイトルが最初に浮かぶこと、駄洒落的な一発ネタが発端だったりすることもあります。
――設定好きとのことでしたので、このお答えは意外ですね。
そうですか? こういった仕事をしていると、よく、どこから話を作り始めるのが良いのかと聞かれたりもしますが……正直に言えば、そんなことを気にしなくてもいいのにと思っています。決まったやり方や段取りを決めてしまうのはもったいないですし、むしろどんなアイデアでも、それは立派な「とっかかり」です。そのとっかかりさえあればどの方向にも拡げていけるのが、そもそも創作の楽しいところではないでしょうか。
――確かにもったいないですね。
ですよね。ただ、そんな中でひとつだけ大切にしたいのは、生まれた登場人物たちのことは大切にしてあげたいという部分です。上で言っていることとやや矛盾しますが、彼らがなにを想いなにをするのか……世界観のためにそこをねじ曲げることだけはしたくないと思っています。
――今回の『翠竜のティリストリ』が誕生した経緯を教えてください。
実は、『ティリストリ』の原案そのものは、けっこう前から用意してあったものです。こういった話をいただいたときにさっと動けるように、企画のストックはいくつも準備してあります。
今回も編集さんに執筆の依頼をいただいたときに、まずLINE文庫のコンセプトをお聞きして、それでアイデアストックの中から「じゃあこんなのは?」と、一番書きたかった『ティリストリ』をプッシュしてみました。
――企画はそこからスムーズに決まっていったのでしょうか?
最初は驚かれました。
寺田「ヒロインはマヤとかアステカとかの……」
編集さん「おぉぅ……それは寺田さんの趣味ですよね……」
寺田「ヒロインは褐色美少女で!」
編集さん「おぉぅ……それも寺田さんの趣味ですよね……」
寺田「ヒロインはお姉さん!」
編集さん「……それは寺田さんが好きなだけでは?」
そんなやり取りがあったのですが、「こんな話」とティリストリの企画書とプロットをお渡ししたら、「そうそう、こういうのですよ!」と。あとはすんなりと決まりました。むしろするっと。
<あらすじ>
「とっても綺麗な鳥を助けたんだよ」
「それはきっと、ケツァールっていう……世界でいちばん綺麗な鳥だね」
幼い日、祖父の田舎でお姉さんに初恋をした少年、妃成カグナは、その8年後 ……故郷の街で、ティリストリと名乗る「思い出のお姉さん」の面影を宿す少女 と出会う。
母親代わりの優しい義理の姉。近所の神社に住む綺麗な幼なじみ。クールでミ ステリアスな転校生。そして、どこからともなくやってきた「思い出のお姉さ ん」によく似た小麦色の少女。静かに流れていく、彼女たちとの穏やかで平穏な日常。
それが終わりを告げるとき……故郷の街を巻き込んだ『真竜戦争』が幕を開け る!
「あの日の雛鳥が、今こそ恩を返そう」――
『真竜戦争』……それは『竜帝』と『竜姫』の契りを賭けた戦い。
ケツァルコアトル、ニーズヘッグ、九頭竜……。
ドラゴンの力をその身に宿した竜姫たちが、世界の行く末と、秘めた恋心の行 方を賭けて……揺りかごの街を舞台に、美しき竜姫たちのバトルロイヤルが今、 始まる!
――『竜姫』という言葉が一際目を惹きますね。
本編に登場する女の子たちは、それぞれの世界を代表する『竜の力を宿した巫女』なのですが、それを一言で表す言葉として採用しました。強そうだったり、可憐だったり、そんな要素をぎゅっと圧縮できているかと思います。
――バトルロイヤルということは、戦いがメインの物語となるのでしょうか?
もちろん、異能バトルものでもありますから、全力で戦います。各ドラゴン固有の力と、万物の霊長たる"竜種"のみが操る『勅令(ちょくれい)』によるバトルを楽しんで欲しいと思います。女の子やドラゴンたちのカッコイイアクションを目いっぱい堪能していただけるかと。もちろん、カグナをめぐる女の子達の『恋のバトルロイヤル』も全力です!
――それは期待できそうですね。
目標は、LINE文庫エッジでバトルが一番カッコイイ! です(笑)
――カバーイラストに描かれている女の子の衣装がとても……キワドイですね。
いいですよね、褐色っ娘。もちろん最初はもうすこし大人しかったのですが、ここだけの話……実は、デザインが進むたびにガンガン露出度が上がっていって……ファルまろさんの溢れるリビドーには感謝しかありません! いやもう、今となっては竜装をまとったティリストリは、お腹と太腿が大胆に出ていないとしっくり来ません。
――本作品の読みどころを教えてください。
『勅令』をはじめとした竜姫たちの能力バトルはもちろんなのですが、僕としては、女の子たちの『想い』こそがこの物語の見どころ……というか、読んで感じてほしいところです。実は今回、ヒロイン相当の女の子が四人いまして……周囲の知人何人かに読んでもらったのですが、みんな推しヒロインが違ってて面白かったです。ぜひ、みなさんも推しを応援しながら読んでいただきたいなと。
――ちなみに寺田さんの推しは?
え? 僕ですか? 僕はティリストリ……と言いたいところですが、今はまだ箱推し(全員推し)ということでお願いします(笑)。
――執筆の際に苦労した部分などありましたか?
今回は、ほとんどありませんでした。強いて言うなら、舞台となった現地の様子を想像で書かなければいけなかったことくらいでしょうか。結局、一度脱稿してから現地に取材に行ったのですが、想像で書いた場所に近しいところが本当にあったりして、聖地巡礼気分でとても楽しい旅行でした。あ、もちろん取材の成果は、しっかりと本文に反映してます。
――逆にノリノリで書けた部分は?
ティリストリに関して言うなら、全部ノリノリで書けました。その瞬間瞬間に、竜姫たる彼女たちやカグナが何を思ってなにをするのか、詰まってしまうとか分からないということはなかったです。アクションも、想いの吐露も、戦闘中の舌戦も……必死な思いも、悔しい思いも、嬉しい気持ちも、みんなティリストリたちと分け合えながら書いていくことが出来たと思っています。
ですから、書き終わって【了】の文字を打ったときは、ちょっとぐっとくるものがありました。読んでくれた人たちにも、感じてもらえると嬉しいですね。
――作品作りにおいて、特に気をつけていることはありますか?
『キャラが一所懸命生きていることが伝わるように』というのは意識しています。あとは、読んでくれた人が、キャラに「よかったね」って話しかけたら、キャラが「うん!」って答えてくれるような、そんな作品を作りたい、そんな作品であってほしいと、いつも考えています。
あと、そうですね……もうひとつ、『世界の拡がり』も意識している部分です。小説は窓みたいなものなので、物語としては読者がのぞき込めるところしか描けないのですが、じゃあそれ以外のところには何があるんだろう、誰がいるんだろう……とか。そんなことを想像したり、思いを馳せたりできると素敵だと思います。
――執筆環境を教えてください。
ぬいぐるみ、フィギュア、おもちゃ、そして本に囲まれた趣味空間……じゃなくて自宅で書いています。事務所があるのでそちらで書くこともありますが、人がいるとついつい無駄話をしてみんなの邪魔をしてしまうので(笑)。そんなわけで最近はもっぱら自室が多いです。
――執筆中、筆が進まなくなるといったことはありますか?
筆が進まないときも、書きたくないときもあります。筆が進まないときは、うんうん考えて、考えてるうちに寝てしまうこともよくあります。でもそんなときは、たいてい起きたら書けるようになっているんですよ。不思議ですね(笑)
――では、執筆中に気分転換などは?
〆切間際か否かにもよりますが、執筆モードに入っているときは基本的に合間の息抜きはしません。考えがまとまらずに散歩をすることはありますけど。
……あ、強いて言うなら料理でしょうか?
――LINEノベルを通じてデビューを目指している方に、これだけはしたほうがよいといったアドバイスがあればお聞かせください。
書くことだと思います。小説を書くことは誰にでもできることではありませんし、足の速い遅いのような才能が厳然としてそこにあります。でも書けるか書けないかは書いてみないとわからないものなので、まずは数本『自分が書きたい物』を書いてみることが大切です。書いているときは辛くても、完成させたときに、楽しかったり達成感があったりしたのなら、それはひとまずスタートラインに立つ才能があるということですから。
LINEノベルは、せっかくの新しいレーベルです。まだレーベルの色もついていないまっさらな遊び場なので、デビューを目指す人も、ただ書いた物を見てほしい人も、臆せずにチャレンジしてほしいなと思います。
内容紹介