学園都市オブ・ザ・デッドタイトル


LINEノベルオリジナル作家のみなさんへインタビューをする本企画。

今回はライトノベルレーベル"LINE文庫エッジ"より10月に刊行される『学園都市オブ・ザ・デッド』を執筆された三河ごーすとさんへお話を伺いました。


一人でフランス料理店へ行ったことも!徹底した取材力が作品を潤す


――今回の作品『学園都市オブ・ザ・デッド』のコンセプトはどのように決まったのでしょうか?  

出発点としては、ゾンビパニックものをやってみたかったんです。その上で、どうやって主人公を特別な存在に描いていくか、主人公たり得るバックボーンを与えるかという部分を考え、“ゾンビサバイバルゲームのトップランカーが現実のゾンビパニックに対応する”というコンセプトが決まりました。


――ゲームシナリオライターでもある三河さんだからこその発想ではないかと思います。登場人物のキャラクター設定はどのように決めていかれたのでしょうか。

ゾンビだらけの世界を生き抜くにふさわしい冷静さと、物語のヒーローにふさわしい正義やドラマを持った人物にすべきと考え、肉付けしていきました。


――現実で起きたらと考えると、とても冷静ではいられないですよね。魅力溢れる主人公が描かれているのではないでしょうか。本作の中で特に思い入れの強いキャラクターはいますか?理由も合わせて教えてください。

ヒロインの水瀬四季です。理由は……可愛いからですね。なんだか投げやりっぽくなってしまってすみません!でも個人的に好きなタイプを書いたつもりなので、一番思い入れがあります。


――本作の舞台は学園都市ですが、作品を書かれる際に取材やロケハンなどに行かれることはあるのでしょうか。

ケースバイケースですね。自分の知識の引き出しにないものは取材に行って補います。

別の作品を書いた時の話ですが、作中で高級フレンチの店を出すために一人でドレスコードのあるフランス料理店に行ったことがあります。さすがに地獄でした……。

今回の作品の場合、建物の配置などは現在住んでいる街を参考に考えていますが、基本的に架空の町を舞台としているので、独自の世界にアレンジして書いています。


――かなり徹底した取材をされているんですね!だからこそ作品のリアリティが増すのでしょうか。それでは、本作の読みどころを教えてください!

一話先で誰が死に、誰が生き残るのかわからないスリルを味わってください。

そして、極限状態で本性をむき出しにする人々の中を、主人公とヒロインだけは力強く生き抜いていきます。その姿に注目していただけたら嬉しいです。


苦手な英語が壁に……ハリウッドへの夢が繋いだラノベの世界


――三河さんが最初に小説を書き始めたきっかけはなんですか?

高校二年生の頃、ハリウッド映画の脚本を書きたいと思っていたんですけど、致命的に英語のセンスがなくて挫折したんです。そこで、ハリウッド映画のようなストーリーを、一番近い形で描ける日本のコンテンツは何かと考えた時に、ライトノベルが浮かびました。


――ハリウッドへの夢がきっかけとなり、ラノベを書き始めたんですね。影響を受けた作家さんや小説を教えてください。

人生で初めて読んだライトノベルが、電撃文庫の三上延先生著『ダーク・バイオレッツ』でした。

少年少女のホラーアクションなのですが、登場人物全員の生き様にのめり込んでしまい、先の展開が気になって夢中で読み漁りましたね。

他にも、ライトノベルではありませんが、赤川次郎先生の『三毛猫ホームズ』シリーズや、加納朋子先生の“日常ミステリー系”など、ミステリージャンルを中心に一般エンタメを多く読んでいました。


――これまでの執筆活動の中で苦労したことや嬉しかったことを教えてください。

私がデビューを目指して新人賞に挑戦することになった当時は、世間が認識していた“ライトノベル”と、私が認識していた“ライトノベル”に微妙なズレが生じていたんです。それによって“読者の求めているライトノベル”を汲み取ることに苦労しました。

元々ハリウッド映画や一般エンタメなど、極めてカジュアルというか、ハイコンテクストなものを排除したエンタメを至上と考えていて……。電撃文庫作品の中でも、いわゆるオタク向けの色が強すぎない作品に多く触れていました。なので、“ライトノベルの読者に向けた物語”が存在することや、その書き方が一般エンタメ小説とは微妙に異なるという事実を理解するのに時間が掛かったんです。

でも何百作品とライトノベルを読む中で、その面白さの肝を見つけられた時は新発見をした研究者のようなカタルシスがありましたし、それまでは知ることのなかった作品の楽しみ方が見つかったので、純粋に嬉しかったですね。


――楽しさを見つけるまでライトノベルと向き合った姿勢がとても素敵だと思います。執筆環境についてもお伺いしたいのですが、普段はどのような時間帯やシチュエーションで作品を書かれているのでしょうか。

毎日お昼くらいに喫茶店に行って夜まで執筆し、一旦映画を見てから、朝まで営業しているレストランに入って午前2時くらいまで書いています。


――作品を書き続けていくために心掛けていることを教えてください。

余裕を持つこと・完璧主義にならないこと・上手い文章を書こうとしないこと、ですかね。

“上手い文章を書こうとしない”という表現は誤解を招いてしまうかもしれませんが、私は自分の中からナチュラルに出てきた文章が作家本人の独自の文章であり、文体だと考えています。

誰かに影響されて『あの人みたいな文章を』と考えることも否定はしないのですが、少なくとも私自身はそこを意識し始めると、だんだん文章がつまらなくなったり、筆が遅くなったりしてしまうので、背伸びはせず、ナチュラルな文章だけで綴っていこうと決めたんです。


“LINEノベル”というジャンルの構築を――新時代の作家へ託す思い


――これからどんなことにチャレンジしていきたいですか?

ライト文芸やライトノベルといった垣根に縛られず、“LINEノベル”という新時代の文化を創造して欲しいです。かつてケータイ小説というジャンルが生まれた例もありますし、せっかく男女問わず若い読者さんに読んでいただける土壌があるので、ただのWEB小説ではない新小説体験として、“LINEノベル”という文化の誕生を心待ちにしています。


――作品を期待されているみなさまにメッセージをお願いします。

私の作品を読んでくださるみなさん、いつも本当にありがとうございます。

『学園都市オブ・ザ・デッド』も是非応援してくれると嬉しいです。


――それでは最後に、これから投稿するユーザーのみなさまへアドバイスや応援の言葉をいただけますでしょうか!

ライト文芸・ライトノベルというジャンル名に惑わされず、伸び伸びと作品を発表して欲しいです。

先人の積み上げたものは偉大ですし、尊敬すべきものではありますが、だからと言ってその土台が全てではありません。正解を当てようとしないでください。

自分の中にあるものを削り出して、拙くてもいいから自分の言葉で小説にして欲しいです。

既定路線や固定概念をぶち破る天才が現れることを切に願っています。

書籍情報

内容紹介
『自称Fランク』『いもウザ』で好調の三河ごーすと&『カゲロウデイズ』のしづによる新作!
「俺はかつて、この光景を見たことがある。俺は……二度目なんだ」
すべての生徒がランク付けされる巨大学園都市。
綾村雄二(あやむらゆうじ)はそこで最底辺のランクGに分類される高校生だった。
身体を鍛え、オンラインゲームを世界ランク1位になるまでやりこみ、小学6年生の妹とだけ会話する暮らし。
そんな日々は、街に『ゾンビ』が出現したことで終わりを迎える。
雄二はオンラインゾンビサバイバルゲームの世界ランク第2位である後輩の少女、水 瀬四季(みなせしき)とのオフ会の最中、パニックに巻き込まれる。
二人は生き残るために、互いの知識と力を合わせて、ゾンビだらけの学園都市を駆け 抜けていく――

著者について
著者:三河ごーすと
ライトノベル作家、ゲームシナリオライター。
MF文庫J『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?』シリーズ、GA文庫『友達の妹が俺にだけウザい』シリーズなどが好調。
ライトノベルのみでなく、ゲームシナリオなどでも幅広く活躍中。
第18回電撃小説大賞《銀賞》受賞。

イラスト:しづ
映像作家としてミュージックビデオを中心に活動をしており、「カゲロウプロジェクト」のMV全般を担当。
またイラストレーターとして「アバター(著:山田悠介)」「カゲロウデイズ-in a daze-(著:じん(自然の敵P))」や「板東蛍子、日常に飽き飽き(著:神西亜紀)等の小説の表紙、他にも音楽アルバムのジャケットイラスト等で活動。

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