
LINEノベルオリジナル作家のみなさんへインタビュー企画。
今回はライト文芸レーベル"LINE文庫エッジ"から10月に刊行される『でび×チキ ブレイブリーソウル 魔界から来た婚約者』を執筆された橘ぱんさんへお話を伺いました。
「santa先生の“マジすぎる”イラストに度肝を抜かれた」
――今回の作品『でび×チキ ブレイブリーソウル 魔界から来た婚約者』のコンセプトはどのように決まりましたか?
元々“男の娘”“性転換”“女体化モノ”が好きなので、ライトノベルでも書いてみたいと考えていたんです。ただ、この辺りの話をラノベで書くとなるとちょっと厳しいのかな……と思っていたので、踏み出せずにいたんですけど、少し前に『君の名は』が大ブームだったじゃないですか。「ひょっとしたらいけるんじゃないかな?」と思い切った結果、このような形で実現しました。
担当さんからは、LINE文庫エッジさんに怒られることになっても、リミッター外して徹底的にやるように言われました(笑)。
――リミッターを外した結果、かなりインパクトの大きい作品に仕上がったんですね(笑)。個性豊かなキャラクターについてもお伺いしたいです。
今回は、主人公と特定のヒロインのストーリーにしようと思っていたので、あらすじを考えた後、そのラインに沿うように世界設定やキャラクター設定を固めていきました。
ヒロインのアレッサは、魔界という世界設定が先に決まっていたので、家名にはソロモン72柱、それもなるべくエッチな設定を持っている悪魔の名前にしようと考えたんです。各々の性格も、ストーリーに導かれて決まっていきましたね。
脇を固めるキャラクターに関しては、主人公とヒロインが決まった後にストーリーを膨らませていく過程で足りないものを埋める形で作ったので、メインクラスで描かれているキャラクターの設定が固まったのは割と最後の方だったりするんですよ。


――橘さんお気に入りのキャラクターを教えてください!
触手です!ラストバトルのイラストで、ヒロインを絡め取る触手のエロさには「santa先生、マジすぎる!」と度肝を抜かれました。これには担当さんも驚愕したみたいです。なんでここカラーにしなかったんだよ、担当さん(笑)!
人物で言うなら、ソフィアですね。可愛いけど腹黒い幼女って、書いていて楽しいんです。歪んでるかもしれないですけど。
――刺激的なご回答をありがとうございます(笑)。今回は魔界という、非現実的な世界が舞台となっている作品ですが、普段作品を書かれる際には、実在する場所をモチーフに書くことはあるのでしょうか?
特殊な場合を除き、基本的にはそのときに住んでいる近場を念頭に置いて書いていますね。お話によっては、舞台そのものに意味があったりするので、そういう場合はモチーフとなる場所を頭に入れるのですが、今回は主人公たちが暮らす街に深い意味合いはないので、特に大きく意識する、ということはなかったですね。
――本作の読みどころを教えてください!
ヒロインが主人公に寄り添い、だんだん依存していく姿……と、言いたいところなのですが、男の子が女性の快感に身悶えるところです(強調)!あと、トイレシーンも……(小声)。

ユニークすぎるスランプ脱出術
――最初に小説を書き始めたきっかけはなんですか?
元々はTRPGが好きで、そこからPBMのゲームマスターという仕事をしていました。
この仕事内容が、大勢の参加者が毎月キャラクターを作って送ってくる、という行動案を判定してまとめて、その結果を小説形式で返すというものでした。継続的に文章を書くようになったのはこれが最初だったと思います。
もっと辿ると、小学生の頃に小説を書くという夏休みの宿題があったんですよ。『銀河英雄伝説』が好きなので、スペースオペラのようなものを原稿用紙20枚分書いた記憶はあるんですけど、既に脳内からデリート済みです。
その後は、美少女ゲームのシナリオライターに転身して過ごしてきたのですが、ひょんなご縁からとある編集さんと知り合い、いつの間にかラノベデビューを果たすことになっていました。人脈って大事ですね。
――橘さんが影響を受けた作家さんや小説を教えてください。
司馬遼太郎先生、藤沢周平先生、池波正太郎先生……挙げれば切りがないですが、やはり北方謙三先生が一番ですね。その割に作風が全然違うじゃないか、とはよく言われますけど。
会話文の進行は、シナリオライター時代にヤマグチノボル先生の書き方を必死に真似して覚えた記憶があります。
――これまでの執筆活動の中で苦労したことと、嬉しかったことを教えてください。
一番苦労したのは、認知症の母親を自宅介護することになって、今まで身についていたはずの“書く習慣”が崩れてしまったことでしょうか。あとは……〆切があると満足に酒が飲めないことですね。意地でも飲みますけど。
嬉しかったことは、アニメ化が決まって、初めて重版したことです。
――これまでの作品を書いていて筆が進まないことはありますか?そういうときの打開策も合わせてお伺いしたいです!
基本はサボります!……嘘ですよ(笑)。
本当に書かなければならないときに書けなくなったら、『あああああああ』とか『いひひひひひひ』『うひょぉぉぉぉぉぉ』とか、なんでもいいので原稿ファイルに打鍵します。そいういう意味不明な文字列を消す行為もそうなのですが、原稿ファイルと向き合うことで気力が湧いてくるんですよね。
――かなりユニークな打開策ですね(笑)。普段はどのようなシチュエーションで作品を書かれているんですか?
一番原稿が進む一日の使い方は起床してすぐ、午前中の間に原稿用紙5枚、10枚と、とにかく書くことですね。そうすると午後の作業含めて文庫本10ページ以上は書ける気がします。
その後に犬の散歩に行って、夜8時くらいには仕事を終わらせます。もちろん、修羅場と化している状況のときはそうはいきませんけど。
――橘さんが作品を書き続けていくために心掛けていることはなんでしょうか。
お金を愛することですっ!……もちろん冗談です!!
――橘さんが作品を書き続けていくために心掛けていることはなんでしょうか。
お金を愛することですっ!……もちろん冗談です!!
真面目に言うと、作家さんそれぞれの中に、書きたい・表現したいテーマやキャラクター像ってあると思うんです。それを忘れないことでしょうか。書きたいことを書いてお金が貰えるなんて、最高じゃないですか。
文字以外の表現方法を。LINEノベルの“遊び心”に期待
――これからどんな作品を書いていきたいですか?
チャット小説に興味がありますね。あとは、酒飲みなので、いつかお酒が絡んだ物語も書いてみたいです。そして何より、毎日最低限の原稿枚数を確実に書ける作家になりたいです!
――LINEノベルに期待されていることを教えてください。
書店や電子書籍ストアに触れる機会が少なかった人たちに、文章で描くエンタテイメントも楽しいということを知っていただける機会になって欲しいと思っています。
せっかくのアプリですので、表現方法も文字だけじゃなくて色々と遊べるようになると楽しいですよね。
――文字以外でのノベル……すごく面白い発想です!それでは、作品を期待されているみなさまにメッセージをお願いいたします。
今までの作品を読んでくださった方はご存知かもしれませんが、下ネタ多めのエンタメ作品になっています。是非とも、エッチで笑える暴走コメディを楽しんでください!キーポイントはラブホです。
――これから投稿するユーザーのみなさまにアドバイスや応援の言葉をいただけますでしょうか!
ほんの十数年前までは、人に提出してチェックを経ないと不特定多数の人に作品が届かない時代でした。その過程で、自分が書いたものがある程度のレベルに達していと感じたり、時代遅れという自己判断を下して、提出すらできないこともあったんです。実績のない人間が、本名というむき身で面と向かって原稿のチェックを受けるのって、怖くてたまらないんですよ。
内容紹介
ほんの十数年前までは、人に提出してチェックを経ないと不特定多数の人に作品が届かない時代でした。その過程で、自分が書いたものがある程度のレベルに達していと感じたり、時代遅れという自己判断を下して、提出すらできないこともあったんです。実績のない人間が、本名というむき身で面と向かって原稿のチェックを受けるのって、怖くてたまらないんですよ。
だからこそ、どうか「恥ずかしい」という理由で書くことをやめないでください。きちんと書いて、投稿してください。恥ずかしがらずに、どんどん出していきましょう。
そういった新しい可能性を秘めた皆さんによって、LINE文庫さんは今の旗手に躍り出てくれると期待しています。
書籍情報
内容紹介
「お願い、アンタの××を、アタシにちょうだい!」
チキンな悪魔と、ちょっぴり勇気ある少年の限界ギリギリ!?バトルラブコメディ開幕!!
魔界に七人いる皇帝候補の一人、アレッサ・クーアフュルスト・シトリーには弱点がある。
臆病で勇気がないことだ。
そのせいでピンチに陥ったところを、ほんの少しの勇気を持つ普通の少年、結城仁美に助けられる。
そんな仁美に惚れたアレッサは、夢魔らしくH(エッチ)なアプローチを仕掛け、仁美を婿にしようと試みるが、仁美の幼馴染みである沙羅や、アレッサの暗殺を企むS系ロリっ娘魔女ソフィアに邪魔されて……。
それでも二人は、ある事件を切っ掛けにひとつになる!限界ギリギリのバトルラブコメ、開幕!!
著者について
著者:橘ぱん
美少女ゲームライター。ライトノベル作家。
デビュー作の『だから僕は、Hができない。』(富士見ファンタジア文庫)がアニメ化。著書多数。ジュブナイルポルノなども執筆している。
イラスト:santa
人気イラストレーター/漫画家。
『キミとナカよし』(ワニマガジン社)など。
本作がライトノベルのイラストレーターとしてデビューとなる。