
LINEノベルオリジナル作家のみなさんへインタビューをする本企画。
今回はライト文芸レーベル"LINE文庫"より10月に刊行される『科学オタクと霊感女 —成仏までの方程式—』を執筆された半田畔さんへ、作品誕生秘話や今後、LINEノベルに期待することをお聞きしました。
対極の存在から生まれるドラマ
――今回の作品『科学オタクと霊感女 —成仏までの方程式—』のコンセプトはどのように決まったのでしょうか?
企画、執筆をしていた当時の自分は“対極なものを書くこと”がマイブームだったんです。先に幽霊というキーワードが浮かんだので、その対極になるのは科学かなぁ、と。
幽霊を全肯定するキャラと、科学の申し子みたいなキャラが手を組んだら面白くなるのではないかと思い、提案してみたら企画が通りました。
幽霊を全肯定するキャラと、科学の申し子みたいなキャラが手を組んだら面白くなるのではないかと思い、提案してみたら企画が通りました。
――二人の女の子が起こす化学反応には、かなり興味をそそられます。キャラクター設定はどのように決めていかれたんですか?
改稿していくなかで、科学オタクである浮島華の性格は少しずつ変わっていきました。人工知能を搭載したドローンを最良の友とするキャラクターなので、人とコミュニケーションを取ることが苦手で、外部からのストレスにも弱い性格が形成されていきましたね。
結果的に、今まで書いてきた小説のなかで一番自己投影しているキャラクターになったと思います。自分自身の考えが、そのまま華の独白部分になることがよくありました。
逆に霊感女の四ツ谷飾は、学生時代にこういう友達がいたらいいなぁという理想から生まれたキャラクターです。少しおせっかいでも、手を引っ張って自分の世界を広げてくれる友達が欲しかったのだと思います。
――半田さんご自身に近い華と、理想の飾。特に思い入れが強いのはどちらのキャラクターでしょうか。
やはり華への思い入れは強いですね。ただ、受け入れられなかったらそのまま自分が否定された気持ちになると思うので、ドキドキです。
華と同様に自分の右目の下にもホクロがあるのですが、そういう身体的な特徴というか、コンプレックスな部分も反映させました。
――ありがとうございます。半田さんは作品を書く上で、舞台となる場所へ取材に行かれることはあるのでしょうか。
小説によりけりで、ストーリーがある程度「場所」に依存する場合は、もちろん下調べや取材を行います。
今回の小説で取材はしませんでしたが、以前『海のユーユ』(※1)を執筆したときは、自分の地元を歩き通しました。沖合から運ばれてくる潮風の香りや砂浜の踏み心地を体感したり、周囲の家の外壁が塩害で錆びていないか観察したり……そういった細かい部分を反映するための下調べは、読者の方が作品に没頭するための大事な要素の一つだと思います。
(編注/※1:人魚が登場する港町を舞台にした物語。一迅社文庫大賞2015で箕崎・七月賞を受賞した。のちに『人魚に嘘はつけない』と改題し、一迅社より刊行)
――読み手としても、作者の方が実際に感じたものを反映させた作品からは、匂いや音を強く感じることができると思います。それでは、本作の読みどころを教えてください!
女の子同士が手を繋いだり、食事を食べさせあったり、喧嘩したり、からかいあったり、真っ暗な夜道を一緒に歩いたり……。「科学」や「幽霊」の要素は、あくまで代替可能なマクガフィンです。究極は無視で大丈夫ですので、ぜひよろしくお願いします!
創作へと駆り立てた、スティーヴン・キングの衝撃
――最初に小説を書き始めたきっかけを教えてください。
小学6年生のときに、スティーヴン・キングの『ランゴリアーズ』(※2)という中編に衝撃を受けて「自分も何か書いてみたい」と思ったのですが、当時はゴルフを習っていて、プロゴルファーになろうと頑張っている最中だったんです。
結局、高校生のときに出場した全国大会でレベルの差を知って諦めましたが、その反動から大学生以降の趣味は一気にインドアになりましたね。
漫画、アニメ、小説、映画。全部取りこんで、咀嚼して、消化して……そこからまた創作意欲を刺激されて、小説を書き始めました。
(編注/※2:アメリカのベストセラー作家スティーヴン・キングが1990年に発表したホラー小説。夜間飛行中の旅客機に乗った乗客の一部が、奇妙な時空に飛ばされ、パニックに陥る様子を描く。邦訳版は文藝春秋社から発行された作品集『ランゴリアーズ』に収録されている。)
――影響を受けた作家さんはいますか?
小説のなかではスティーヴン・キングです。『ペット・セマタリー』(※3)と『ニードフル・シングス』(※4)が同率一位で好きです。
小説を書く上で、影響を受けることが多いのは映画ですね。セリフ回しや会話のテンポは、海外ドラマから大きな影響を受けています。冗談を言って受け流し、それでいてお互いの存在を認識し合いつつストーリーはきちんと進む、あの感じが最高です。
(編注/※3:1983年発表のホラー小説。死者の蘇りと、家族愛をテーマにした作品。邦訳版は文藝春秋社から刊行されている。映画化もされており、映画版のタイトルは『ペット・セメタリー』。)
(編注/※4:1981年発表のホラー小説。平和な田舎町にやってきた骨董商が巻き起こす、奇妙な事件を描く。邦訳版は文藝春秋社から刊行。同名のタイトルで映画化されている。)
――半田さんのこれまでの執筆活動の中で、苦労したことや嬉しかったことを教えてください。
原稿、特に初稿を送って担当さんからのフィードバックがなかったりすると、苦労するというか、不安になります。
逆に「こうしたらどうか」とか、「この部分に違和感がある」とか、担当さんからいただいた提案を反映することで作品が面白くなってくると、とても嬉しくなります。今回執筆させていただいた『科学オタク〜』では嬉しい瞬間がたくさんありました。
――まさに二人三脚ですね。作品を書いていて筆が進まないことはありますか?そういうときの打開策も合わせて教えてください。
執筆中に進まなくなるということはないですが、プロット段階で詰まることはあります。
自分は、おおよその展開や結末を決めてからでないとスタートできないので、その分一度執筆を始めてしまえば、あとは天国です。
それでももし、進まないことがあるとしたら、本能的に書こうとしている展開がつまらないと感じ取っているということなので、プロット段階から見直すと思います。
――普段はどのような時間帯やシチュエーションで作品を書かれているのでしょうか。
兼業作家として活動しているので、会社の時間と執筆の時間は明確に分けています。会社の日は会社の仕事しかしません。逆に執筆に充てている日は会社関係のやりとりはシャットアウトして、体力が続く限り書き続けますね。
執筆自体は自室で行っています。カフェで優雅にポメラを起動して作業、なんてカッコよくて憧れますが、性格的にたぶん無理です。あと飼っている猫がすり寄ってきたら強制的に作業をストップさせます。

――確かに、猫にはかないませんね……。では、作品を書き続けていくために心掛けていることを教えてください。

――確かに、猫にはかないませんね……。では、作品を書き続けていくために心掛けていることを教えてください。
アウトプットだけだと枯渇してしまうので、インプットも忘れないようにしています。書きたいことが尽きたら廃業なので、現実的に小説家を続けていくという意味でも、書きたいものを常に持っておくと打ち合わせもスムーズだと思います。
新たな地平を目指して――未経験の分野への挑戦
――これからどんなことにチャレンジしていきたいですか?
フィクションやリテラチャー問わず、まだ書いたことのないジャンルにどんどん挑戦したいです。今はライト文芸系が多いですが、30代になったら純文学も書いてみたいです。
小説の分業にもチャレンジしてみたいですね。アメリカの出版社では、あるコミックの原作者が生みだしたキャラや世界観をチームで共有し、あとは分業でさまざまなシナリオライターがストーリーを手掛けていると聞きます。これを小説でできない理由はないと思うんです。原作者の方が執筆できなくなっても、読者が求める限り、半永久的に作品を生み出せる分業のシステムはとても興味深いですよね。
――LINEノベルに期待されていることを教えてください!
今までにない作品、流行、出版システム。そういうまっさらなものが、たくさん生まれる場所だと予感しています。
新しいことを始めれば、当然色々な慣習や常識の壁が立ちはだかりそうですが、それを打ち破ることができれば、最強の出版レーベルになると思います。
――ありがとうございます。それでは作品を期待されているみなさまにメッセージをお願いします。
初めましての方も、そうでない方も、よろしくお願いします。
「あの作家の新刊だから」「あらすじがなんとなく面白そうだから」「キャラクターの絵が魅力的だから」「知り合いが勧めていたから」など、本を手に取る理由はさまざまです。皆様の中に何かが引っかかって、興味を持っていただけたら幸いです。
――最後に、これから投稿するユーザーのみなさまにアドバイスや応援の言葉をいただけますでしょうか。
内容紹介
自分が面白いと思うもの、好きだと思うものを書いて人に読んでもらうのは、自分の脳みそを皿に載せて召しあがれと差しだしているようなものですから、かなり勇気がいるのではないでしょうか。
しかし人の目に触れれば、それだけチャンスが増えるということだと思います。LINEノベル内では特に、多くの出版社の編集さんが投稿された小説を読むことになると思うので、最終的に出版交渉の段階で、あなたの小説を取り合うことになるかもしれません。
どんな小説が生まれるてくるのか、とても楽しみにしています。
どんな小説が生まれるてくるのか、とても楽しみにしています。
書籍情報
内容紹介
浮島華(うきしまはな)は、幽霊を信じない。
科学の徒である彼女にとって、幽霊の存在は認めてはならないものだった――そう、あの女に出会うまでは。
華が主宰する科学サークルのオリエンテーションに乗り込んできた風変わりな女。彼女は四ツ谷飾(よつやかざり)と名乗り、「幽霊はいるよ」と囁いた。
戸惑う華の手を飾が握った瞬間、華の目に飛び込んできたのは、決して認めてはならない存在――そう、幽霊の姿だった。
飾は幽霊の姿を見ることができる、本物の霊能者だったのだ。
飾には、自分と触れ合った相手に霊を見せる力があった。
幽霊を目の当たりにして、恐怖に叫ぶ華に、飾は言う。
この世に未練を残し、幽霊になった人々――その魂を救うのを手伝ってくれないか、と……。
オタクで陰キャでコミュ障で、科学研究にしか興味がない、「科学オタク」の浮島華。
明るく元気で人なつっこいが、マイペースで人とズレている「霊感女」の四ツ谷飾。
二人が手をつなぐとき、新たな世界の扉が開く!
著者について
著者:半田畔
2015年に第三回富士見ラノベ文芸大賞・金賞を受賞。
翌年、投稿作を改稿した『風見夜子の死体見聞』(富士見L文庫)でデビューする。
代表作に『人魚に嘘はつけない』(一迅社)、『群青ロードショー』(集英社オレンジ文庫)などがある。
イラスト:碧風羽
イラストレーター・漫画家。
代表作は、西尾維新『少女不十分』(講談社ノベルス ※イラスト担当。)。
赤雪トナ『竜殺しの過ごす日々』シリーズ(ヒーロー文庫 ※イラスト担当)。
その他、『Fellows!』(KADOKAWA)Vol.1~18表紙など。