白沢戌亥『ガチャスフィア』タイトル画像


LINEノベルオリジナル作家のみなさんへのインタビュー企画。
今回はライトノベルレーベル"LINE文庫エッジ"から11月に刊行される『神籤世界(ガチャスフィア)の冒険記。~ギルドリーダーはじめました~』を執筆された白沢戌亥さんへお話を伺いました。


『神籤世界(ガチャスフィア)の冒険記。~ギルドリーダーはじめました~』あらすじ
年収の三分の一をガチャに投じながら、無(駄金ではないと自分は信じている)課金を自称する主人公、群上立太(リッタ)は、ある日ガチャが信仰の対象となっている異世界へと転移してしまった。
冒険者として生きることになったリッタは、初めて引くこの世界のガチャで不運にも正体不明の奇妙な指輪を引き当ててしまう。

しかし、その指輪はパラメーターなどのUIを表示することができる特殊な指輪だった。
そして彼は、現世でのゲーム攻略のノウハウや、ガチャで手に入れたアイテムを使いこの世界で初の『冒険者ギルド』の設営を目指すこととなる。

「ここは俺たち冒険者の世界だ!世界を守れ!気の狂った神から!金と信仰に狂った教会から!
俺たちはもう、単なる無法者じゃない! 未知なる危険を冒し、真実を解き明かす者、冒険者だ!!」

これは後にこの世界に変革をもたらすある青年の物語である。


“ガチャ”へ並々ならぬ情熱を捧げる主人公・リッタ

本作のコンセプトはどのように決まりましたか?

LINEノベルという媒体で読むのならば、同じスマートフォンで遊ぶソーシャルゲームをコンセプトにすることで、読書の皆さんが感じるハードルを低くできればと考えました。
私自身がゲーム会社勤務ということで、そうしたゲームの資料に触れやすいという理由もあります。

ガチャ_口絵2文字なし_RGB


――本作の資料収集には最適な場所ですね。キャラクター設定はどのように練っていかれたのでしょうか。

ソーシャルゲームをモチーフにしたとき、良くも悪くも皆さんが思い浮かべるのが「ガチャ」というシステムだろうと考えました。その「ガチャ」に対して真摯に、情熱的に取り組むキャラクターとして作られたのが主人公です。
そしてその主人公がふと足を踏み入れた世界で、その真摯な情熱を傾ける対象がこの作品のヒロインなのです。

――“年収の三分の一をガチャに投じる”という主人公の設定に、その情熱がよく表れていますよね。特に思い入れの強いキャラクターはいますか?

フローリアと老司祭のふたりですね。ふたりとも、物語の要所要所でしっかりとした役目を果たしてくれていて、作者としては非常にありがたく、頼りになる存在だからです。こういう脇役がいるだけで、物語の深みがぐっと増しますから。

――本作の読みどころを教えてください。

主人公のリッタは、他の作品の主人公に比べると特に秀でた部分はありません。彼が他人より秀でているのは、「ガチャ」というものに対する情熱と面倒見の良さくらいのものです。
でも、普通なら冒険の役に立ちようもない「ガチャ」への情熱で物語を進め、認められていく主人公の姿を見ていただければと思います。

ガチャ_口絵1(文字なし)_RGB


書くことを嫌う=作家としての自分を全否定すること

――最初に小説を書き始めたきっかけはなんでしょうか?

小学生のころから小説は好きでしたが、自分で書くきっかけになったのは中学生のときの国語の授業です。原稿用紙を渡され、小説を書いてみろといわれて書いたのが最初の作品になります。
それ以来、物語を自分で作ることが楽しくなりました。

――影響を受けた作家さんや小説を教えてください。

森岡浩之先生の星界シリーズは、キャラクターの掛け合いの部分で大きな影響を受けたと思います。文章全体では海音寺潮五郎先生、佐藤大輔先生の影響が大きいでしょうか。作品の雰囲気という部分では、ロバート・A・ハインライン先生かと思います。

――これまでの執筆活動の中で、苦労したことや嬉しかったことを教えてください。

やはり、頭の中にある光景をアウトプットできないことが一番の苦労です。今でも良くあることですが、自分との戦いとはこういうものなのかと実感しています。
逆に嬉しかったことは、やはりファンからの手紙やメッセージですね。自分の作り出したものが受け入れられ、愛されていることは、この上なく嬉しいことです。

――作品を書いていて筆が進まなくなることはありますか?そういうときの打開策も合わせて教えてください。

筆が進まないことに対しては、一定時間立ち向かってだめなら諦めることにしています。今もゲーム会社の一員として文章を書く仕事をしていますが、その部分では変わりません。
詰まったなら、目の前の問題ではなくまったく別のことに目を向け、まったく別のことを考えることで考えをリセットしています。

――会社員と作家の両立で大変お忙しいと思うのですが、普段はいつ、どのようなシチュエーションで執筆されているのでしょうか?

平日は会社から帰ってきてから、休日は家事の合間という感じで書いています。

――白沢さんが作品を書き続けていくために心掛けていることを教えてください。

書くことを好きでいることだと思います。スランプなどは当然あるものとして、書くという行為が嫌いになるようなことだけは避けようと心掛けています。書くことが嫌いになれば、作家としての自分を全否定することになってしまいますから。


「あなたの生み出す作品が、きっと誰かの道標になる」

――これからどんなことにチャレンジしていきたいですか?

原作や脚本などに挑戦できればと思っています。新しい文章の書き方を覚えるのが好きなので、新しい分野への挑戦は続けていければと考えています。

――LINEノベルに期待されていることを教えてください。

現在、活字離れとは言われていますが、個人的には読む手段が変わっただけで、文字を読むという文化そのものが廃れたわけではないと考えています。ですから紙媒体、パソコン、スマートフォンと様々な形で分断されてしまっている作者と読者を繋ぐツールになっていってほしいと思っています。
実際、自分の仕事はどちらも文字を読むことに楽しみを見出す人々がいて成り立つものです。そういう立場からも、新しい可能性を作って貰えればと思う次第です。

――作品を期待されているみなさまにメッセージをお願いします。

主人公は比較的平凡で、ガチャに情熱を傾けている以外は皆さんと変わらないかと思います。もしかしたら、読者の皆さんの中にもガチャ求道者の方がいて、「うんうん、自分も良くやる」と思う部分もあるかもしれません。そうした方々は、同志であるリッタを応援してやってください。
逆に「なんだこのトンデモガチャ野郎は」と思う人もいるかもしれません。そういう方たちには、今後もガチャの沼に入り込んでリッタと同じ道に落っこちないよう注意して、リッタを見守っていただければと願うばかりです。

――最後に、これから投稿するユーザーのみなさまにアドバイスや応援の言葉をいただけますでしょうか。

私自身、他人から与えられた刺激によって今の道に進みました。
もしもあなたが何らかの刺激を受け、この世界に作品を生み出したならば、そしてそれを発表したならば、それはきっとあなたの次に作品を生み出す誰かの刺激となるでしょう。
自分が感じたこと、思ったことを素直に作品にすれば、それはあなたの作品を読む人々の、唯一無二の道標となります。


書籍情報

著者について
著者:白沢戌亥
作家業を営むかたわらで、青いハリネズミのゲーム会社で働くクリエイター。
PCシュミレーションゲームで締切までの時間を食い潰し、大量のボードゲームとともに起居している。
他の著作に『白の皇国物語』(アルファポリス/1~19巻刊行中)など。

イラスト:Nidy-2D-
ラストレーター・キャラクターデザイナー
PSO2es、メガミデバイス、天華百剣、フィギュアヘッズA、三国志大戦、ブレイブリーアーカイブ、Z/X、チェンクロ、SHOW BY ROCK!!、DIVA-X、ガンスリンガーストラトスなど。


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